理科・地学 夏の地学野外巡検旅行(京都・滋賀)
2017.08.19
8月12日から14日にかけて、理科・地学では、地学部を中心とした野外巡検旅行を、京都・滋賀で行いました。顧問の日程がうまく合わず、実施がお盆の時期になってしまったことから、行きたいと思っていた場所がお休みだったりして、行程を組む段階で苦労しましたが、3日間けがや事故なく予定通りに実施することができました。生徒たちにとっても実りある時間になっていれば幸いです。
初日は、まず京都駅からバスで京都大学へ行きました。京都大学法学部2回生の地学部OBと合流し、大学構内を案内してもらったり、一緒に学食で昼食を取ったりしました。京都大学総合博物館を見学したあと、花折断層のつくる地形と、琵琶湖疏水を見学しました。花折断層は、若狭湾から京都盆地まで至る三方・花折断層帯を形成している活断層です。昔から鯖などの物資を京都へ運ぶルートであった「鯖街道」は、この花折断層の活動で破壊され、弱くなった岩盤が侵食されることによってできたものです。一方の琵琶湖疏水も京都の物流を担う重要な水路です。明治維新の前後に、禁門の変や東京への遷都によって人口減少、産業の衰退といった状況に直面した京都が、水運のみならず、生活用水、農業・工業用水の確保や、発電など、京都の再興のために威信をかけて行った明治期最大の土木プロジェクトでした。地学的な側面のみならず、歴史や土木事業の側面も意識しながら、これらを実際に見て歩きました。また、この日はペルセウス座流星群の極大日に当たっており、夜にはその観察もしました。
2日目は初日に引き続き花折断層による地形の観察に加え、露頭でも断層を観察しました。その後、琵琶湖博物館では琵琶湖の成り立ちや琵琶湖の生物などの概要を学び、安土城では石垣に使われている湖東流紋岩類(これは滋賀県の岩石に認定されています)の溶結凝灰岩や花こう斑岩を観察するとともに、安土山の山頂から地形を観察しました。この日も夜にはペルセウス座流星群の観察もしました。
3日目には関ケ原駅まで移動し、バスで滋賀県と岐阜県の境界にある伊吹山に登りました。ここで見られる石は赤道付近で堆積した石灰岩などが付加体として日本列島にくっついたものです。フズリナやウミユリといった古生代末の生物の化石を観察しました。
以下、写真とともに行程を振り返っていきたいと思います。よろしければご覧ください。
京都大学総合博物館の見学では、もう少し長い時間をかけてみたいと思わせる充実した展示物でした。とくに、自然科学の展示スペースでは、ゾウの化石や類人猿、熱帯雨林の気象観測など、京都大学が行ってきた世界的な研究の成果が随所に展示されており、生徒たちも地学分野以外の展示についても関心を持ってみていました。また、これから見学する花折断層の説明や、地層の剥ぎ取り標本もあり、よい導入になったと思います。
京都大学農学部のグラウンドや吉田山・吉田神社では、花折断層がつくった段差を見学しました。
そこからは琵琶湖疏水の見学です。まず花折断層と銀閣―南禅寺断層の間を歩き、哲学の道(=琵琶湖疏水)を通って、南禅寺へ行きました。南禅寺の山門の上からは京都を一望できました。南禅寺の中にある琵琶湖疏水の水路閣やインクライン(傾斜鉄道)、「ねじりまんぽ」と呼ばれる歩行者用トンネル(レンガが斜めに積まれている)などを見ました。
宿舎では明日の行程や宿泊上の注意点などのほかに、生徒どうしで巡検後のレポート課題の担当決めなどをするミーテイングを行います。
ミーテイング後は、就寝までの間、宿舎のある琵琶湖畔でペルセウス座流星群を見ました。それほど長い時間ではありませんでしたが、大きなものも含めていくつも流星を見ることができ、生徒の中には運よく流星を写真に撮れた人もいました。
2日目の朝は、出発前に宿舎前の琵琶湖畔に出て琵琶湖を眺めたり、水に触ってみたり、水質を調べてみたりすることころから始まりました。
マイクロバスで鯖街道を南下しながら、花折断層の断層破砕帯が露出している露頭、さらにV字谷などの安曇川による侵食地形を観察しました。
それから琵琶湖博物館に行き、昼食を取ったり、館内の見学をしました。ちなみに、琵琶湖博物館では外来魚であるブラックバスの天ぷらを使ったどんぶりを食べていた生徒もいました。
その後、安土山の安土城跡へ行きました。安土城跡のまわりは今では干拓されており、緑が広がっておりますが、かつては三方を琵琶湖の内湖に取り囲まれていました。城壁に使われている湖東流紋岩類を、地学のガイドを片手に探しながら登りました。(溶結凝灰岩の「本質レンズ」は結局よくわかるものが見つかりませんでした。行く機会があれば探してみてください。)
3日目は琵琶湖の北岸を電車で回り、関ケ原へ。そこからバスで伊吹山へ行きました。途中までは晴れていて眺望もひらけていたのですが、山頂付近は霧がかかっており、残念ながら景色を楽しむことができませんでした。しかし、標高による雲の有無を体感できたという意味では、これもまた興味深いことだったかもしれません。山頂付近の岩には特に多くのフズリナやウミユリが含まれており、探しながら楽しく登ることができました。3日間お疲れ様でした。